NTU MBA
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Bさん/私費

はじめに

前職はエンターテインメント系の出版社で、少年向けコミック誌の編集やアニメーションのプロデュース等に携わっていました。
子供の頃からの念願の仕事に就き、当初はそのまま一編集者として職業人生を全うするつもりでしたが、入社した私を待ち構えていたのは時代の変革の大きなうねりでした。
出版の市場規模が縮小していく中で、旧来のビジネスモデルを維持するためにもがき続けるのではなく、時代の変化に対応した新しいエンターテインメントビジネスのあり方を問うことこそが、今、求められていることではないだろうか。
そのように漠然と抱いていた問題意識の解決の糸口を模索する中で、MBA取得を意識するようになりました。

それでも日々の雑務に追われるうちに、何ら具体的な行動が伴うことなく数年間が経過してしまいましたが、個人的な事情により会社を辞め、台湾へ移住することになったことで転機を迎えます。
当時は中国語どころか英語さえ実際に使った経験が全くなく、また、留学どころか海外旅行の経験さえほぼ皆無の状態でした。
そのため、到底、そのままの状態で台湾のビジネス界で生きて行く自信などあろうはずもなく、海外に適応するための”猶予期間”として、MBA取得を現実的に検討するに至りました。

Why Nanyang MBA

台湾のビジネス環境に適応することが第一の目的でしたので、当初は台北にあるいくつかのMBAプログラムを志望していました。
しかし、2015年11月に台北で行われた、QS World MBA Tourに参加した際に、NTUのアドミッションスタッフの方から熱心なお誘いを受け、シンガポールのMBAを初めて選択肢として検討しました。
総額150万円程度の費用負担で済む台湾のMBAに比べ、シンガポールのMBA取得には莫大な費用がかかってしまうことが非常に頭を悩ませましたが、台湾だけでなく、”グレーター・チャイナ(中華圏)”全体での将来的なキャリアを考え、出願を決断しました。
NUSにも並行して出願していましたが、NTUから先にオファーをいただいたこと、アドミッションの雰囲気・熱意、1年弱というプログラム期間、合計費用などを総合して、最終的にNTUに決めました。

受験スケジュール

2015年2月       MBA受験を決意

2015年5月             7年ぶりにTOEIC受験(台湾大学受験のため)

2015年8月       退職、台湾移住

2015年9月         GMAT & GRE初受験

2015年10月下旬   GRE2回目

2015年11月中旬   シンガポールのMBA出願のため、急遽IELTS初受験

2015年12月上旬   GRE3回目、IELTS2回目(出願スコア)

2015年12月中旬   エッセイ執筆、推薦状依頼

2015年12月下旬   レジュメ作成、2nd Round出願

2016年1月上旬     インタビュー、数日後にオファー

TOEFL / IELTS

当初は、TOEFL/IELTSの代わりにTOEICスコアでの出願が認められていた台湾のMBAを受験するつもりでしたので、何も対策をしていませんでした。
私は、TOEICは900点台なのに英語はひと言も話せない、一行も書けないという、何ら必要もないのに自己啓発でTOEICに取り組んでは無駄に高得点を叩き出した日本人にありがちな駄目パターンの人間でしたが、TOEICで出願できるのを良いことに、スピーキングやライティングの対策をついつい後回しにしていました。
そのため、急遽シンガポールのMBA受験を決めてIELTSが必要になってからは、慌ててCambridgeのIELTS 10を2回分解いたのを除けば、ついぞまともな対策はできずじまいでした。

GMAT / GRE

学部時代のGPAが2点台半ばで、留年もしており、かつ出版という極めてドメスティックな業界に身を置き、漫画編集という特殊な仕事をしてきた私は、MBAアドミッションの側からはユニークな銘柄に見える一方で、基礎学力に対する信頼性が著しく低いだろうと感じていました。
そのイメージを払拭するためGMAT/GREは大学の要求基準を絶対に上回る必要がある、しかし、アメリカのトップ校を目指していたわけではなかったので、極めて高いスコアを取る必要もないだろう。
そう考えた私は、GMAT650点相当のスコアを目標として設定しました。

元来私は、困難な目標をどのように突破していくか、自分で計画を立ててあれこれ試行錯誤していくのが好きな性格です。
そのため、受験予備校が培ったベストプラクティスに頼るよりも、独学の方が楽しみつつ集中力を持って受験勉強に取り組めるだろうと考えました。
また、客観的に見て、世間一般の日本人海外MBA受験生と比較した場合、自分の頭の出来はおそらく中の下レベルに位置するだろうと判断し、まともに思考能力で戦うよりも、泥臭い暗記で勝負しようと基本戦略を描きました。
そのため、2015年2月にMBA受験を決断してから約半年間、英単語の暗記を中心に据えることにしました。

わからない単語を見つけるたびにAnki(Ankidroid)というフラッシュカードのアプリに登録し、それを毎日ひたすらノルマ分消化していくというスタイルで暗記を続け、暗記した数は半年間で約8000語に達しました(記憶の維持コストとして、1日あたり約70分の復習時間が要求されましたが)。

腕試しと試験への適性を確認するために、2015年9月に台北市でGMATとGREを初受験したところ、結果はGMAT580点(Verbal 21、Math 49)、GRE309点(Verbal 150、Math 159)(GMAT換算570点相当)。
スコアこそGMATがやや上でしたが、暗記した膨大な単語量を活かしやすいのはGREだと判断し、それからはGRE一本に絞って学習を続けました。
基本的にはVerbal、Mathともに公式問題集とMagooshという海外の有料ウェブサービス(6か月99ドルという破格の安さ! ただ、現在は少し値上げしたようです)だけを使って対策しました。

Magooshや公式問題集等での本番形式での練習では、20回以上データを取り、Verbalが151点から155点、Mathが164点から170点の幅だったので、トータルのスコアはGRE316点(GMAT640点相当)から325点(GMAT710点相当)の間だろうと予測しました。

しかし実際のスコアは、10月のGRE受験2回目で313点(Verbal 152, Math 161)(GMAT換算600点相当)、12月頭の3回目で315点(Verbal 153, Math 162)(GMAT換算620点相当)と、練習時に比べるとあまり振るわないものでした。
いずれもMathセクションを解いている最中に、試験会場で1本だけ渡された鉛筆の芯が折れていて5分以上まったく計算ができなかったり、途中で隣の教室で何故かボイスパーカッションの練習が始まったりなどのトラブルのせいで集中が途切れ、最後まで解き終えることができなかったことが原因でした。
(GREのMathはGMATのMathよりも明らかに簡単ですが、間違えた問題の数がそのままダイレクトに減点されるのと、制限時間がより厳しい印象なので、意外と高スコアを取りにくかったです。しかし3回連続失敗しているので、これが実力だと言われれば、そう認めざるをえません)。
そんな事情もあり、「このままでは終われない!」と、当然1月と2月にも受験する腹積もりだったのですが、急遽、年内に出願を終えるようアドミッション側に念押しされ、消化不良のまま受験を終わらざるを得なくなってしまいました。

私は大手企業を辞めて異国の地でMBA受験に臨んでいたので、もし不合格ならもう後がありません。
そのプレッシャーのためか、ほとんどの試験は前日に一睡もできないまま最低のコンディションで受けることになってしまいました。
しかし、自分の精神的な部分のマネジメントの甘さも実力のうちと認識し、半年以上に及んだGMAT/GREとの孤独な戦いを、これで手打ちとしました。
(しかし、本来の実力ではGMAT700点相当、最低でも650オーバーは取れた自信があるので、ここで切り上げてしまったことを、実は今でも少し後悔しています。外資系コンサル等を志望する場合は、GMAT/GREスコアは入学後も大きく関わってくるので、高得点であるのに越したことはありません)

エッセイ

ビジネスに関して抱えていた問題意識、これまで参加したプロジェクトで得た経験、MBA後の展望などを素直な筆致で書き上げました。
スケジュールの都合上、ほぼ一週間でNTUとNUS出願分のエッセイをアイデア出しの段階から最終仕上げまで行うことになりました。

構成の段階では読み手を飽きさせないよう工夫を凝らしましたが、いざ執筆段階になると、まともに英文を書いたのが初めてだったこともあり、かなり苦戦を強いられました。
自分一人でクオリティの高いエッセイを書き上げる自信があったので、エッセイカウンセリング等のサービスは利用しませんでした。

推薦状

前職で所属していたコミック誌編集部の編集長、および副編集長に依頼しました。
あらかじめ夏頃に、あらゆる質問に対応可能な叩き台を作ってもらった上で12月に正式に依頼したので、比較的スムーズに進んだと思います。

インタビュー

年末に慌ただしく出願を終えて、ほっとしたのもつかの間、一週間ほどでSkypeインタビューの連絡が来ました。
英会話の経験もほとんどない状態でしたので、あらかじめ質問されそうな項目をリストアップし、それに対する回答を準備することにしました。
結果的に約40の想定質問に対する、(1) 簡潔な回答、(2) 具体的な回答、(3) 例、(4) 理由、をフルセンテンスで準備して丸暗記しました。
これにより3往復程度のキャッチボールまでなら、丸暗記している感を出すことなく自然な会話を装うことができるはずでした。

しかし、想定していたよりも、むしろ雑談のような和やかな雰囲気でのインタビューになってしまったため、作戦がうまくいったとは言い難いです。
インタビュー後はさすがに消耗しきっていたのですが、回復を待つ間もなく、わずか2日後に奨学金付きでオファーの連絡をいただきました。

コスト

IELTS、GMAT、GRE受験費用15万円くらい

ほかもろもろ5万円くらい

合計20万円程度

MBA生活

シンガポールに来てから約5か月。これまでの人生で最も忙しく、そして苦しかったTrimester 1を終えて、現在はMBA生活がようやく中盤に差し掛かろうかというところにいます。
怒涛のTrimester 1をいったいどうやって生き残ることができたんだろう、と自分でも不思議なくらいです。
NTUは1年弱の極めてインテンシブなプログラムということもあり、入学後は90人前後のクラスメイトとともに濃密な日々を送ることになります。
私は入学前の1年弱の間、台湾に住んでいたにも関わらず、外国人の友人が一人もいないという状態からのスタートでしたが、多くのグループワークが課される一蓮托生の環境の中で、たくさんの友人に恵まれました。
1年弱という限られた時間を最大限に活用したいという方にとっては、NTUは最高の環境だと言えます。

メッセージ

MBAがもたらす可能性は、いかに良い準備ができたかに大きく依存します。
また、入学後はあまりに忙しすぎるために、目の前に降りかかるタスクをひたすら処理するだけで精一杯になり、本来の目的を忘れがちになります。
そのため、入学前の段階でどれだけ良い準備ができるかが、実り多きMBA生活を送るための鍵になると思います。